ハワイ諸島は、伝統的な知恵と知見を組み合わせて、自然と文化の保全及び持続可能な利用に向け取り組んでいる。世界で最も孤立した群島であるハワイには、世界に存在する14の気候区分のうち、10の気候区分がある。また、ハワイには、2万8000種以上の動植物が生息しており、そのうちの90%がハワイの固有種といわれるほど、生物多様性が最も豊かな場所でもある。米国で絶滅危機に瀕している生物の約20%は、ハワイでのみ見ることができる。ハワイは、エネルギー資源がほぼないことから、世界の生物及び文化保全に向けた活動及び科学的取り組みが集大成する場所となった。
世界文化遺産及び保全地域 | ハワイ諸島には、2つの世界文化遺産(パパハナウモクアケア/ハワイ火山国立公園)とひとつの生物圏保存地域がある。 |
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生態系の保全 | 太平洋地域における島々の生態系は、孤立していることから、生息地の破壊、多来種の侵入、気候変動など深刻な脅威にさらされている。多来種は、農業、自然、観光産業、健康などを脅かしている。検疫と革新的な対応によって成果を収めてはいるものの、なお改善すべき点が多い。ハワイ・バイオセキュリティプラン(Hawaii Biosecurity Plan)は、今後の方向性を示している。関連の取り組みをけん引し、新たな研究所及び調査機関を設立し、調査官及び初期対応できる人材を増やし、新技術を用いて効率的に危険を軽減しようとハワイ外来種管理局(Hawaii Invasive Species Authority)の設立に向け取り組んでいる。海洋の温暖化、堆積、汚染、持続不可能な漁業慣行により大きく脅かされてきたハワイの漁場とサンゴ礁は、気候変動と人間活動によって深刻な被害を被っている。沿岸海域の30%を効率的に管理するという目標を達成するためには、全国的な計画の策定、監視、持続的なアップデート、優先順位戦略の実行、地域社会及びステークホルダーとの協業、海洋警戒の強化などが不可欠だ。 |
文化イニシアティブ | ハワイ先住民の子孫(及びその他の住民)で構成された機関及び個人が伝統的なカナカ・マオリ(ハワイの先住民)文化を中心としたハワイ独特の文化的アイデンティティの復活に向け、率先して取り組んでいる。 |
再生可能エネルギーイニシアティブ | ハワイクリーンエネルギーイニシアティブ(HCEI)は、エネルギー使用量の95%を石油の輸入に依存しているハワイの経済構造から抜け出し、2030年までにエネルギー需要の70%(主にハワイの再生可能エネルギーの利用及びエネルギー効率性の向上によって)をクリーンエネルギーでまかおうとする計画である。気候変動はハワイの森林、海岸線、サンゴ礁を脅かす最も大きな要因である。また、ハワイは米国全域において、最も石油に依存している州でもある。そのため、最大限の努力を傾け、世界的かつ地域的に化石燃料の使用を抑制していかなければならない。2045年まで電気使用量のすべてを再生可能エネルギーでまかなうという目標は、このような取り組みの一環である。 |
食料安全保障 | ハワイにおける食料生産の増大に向けた取り組みの基盤を整えるため、すべての農地利用調査を2016年に終えた。食料安全保障を強化し、地域の農業従事者を支援する取り組みの一環として、農業融資プログラムを拡大し、外来種の侵入を防止・制御し、農地の価値を高め、改善するという目標を達成すべく最善を尽くしている。 |
ハワイの漁業及びサンゴ礁 | ハワイの文化、経済、ライフスタイルは、海洋生態系と密接につながっている。レジャーや観光だけでなく、食料供給を確保するためにも健康な海、海洋に依存している。ハワイのサンゴ礁は、住民のみならず年間900万人に達する観光客にも文化、経済、レジャーなどの機会を与えるハワイ、ひいては世界の宝である。年間3億6000万ドルをもたらすハワイの海及び海岸は、地域経済及び観光業界の原動力でもある。気候変動への適応に向けて取り組み、地域社会中心の管理、持続可能な漁業の奨励、海洋警戒の強化及び監視を通して、今後も健康なサンゴ礁を保全し、持続可能な漁業の普及を目指す。 |
森林 | コア及びオヒアの木が生息する熱帯雨林は、クリーン淡水を確保し、供給するという点で、ハワイでの生活と経済において欠かせないものである。また、文化的にも非常に重要であり、自生植物や野生動物に満ちた場所でもある。原生林の50%は破壊されているが、残りの50%は、ハワイの温室効果ガス年間排出量の6倍に達する3200万トンの炭素を貯蔵している。ハワイ州の土地・天然資源局(DLNR)は、残っている森林を疾病、火災、外来種から守るべく取り組んでいる。森林は、生存に欠かせない淡水を供給するほか、土地の腐食及び洪水防止においても非常に重要な役割を果たしている。 |
気候変動 | ハワイの原生林は、気候変動に立ち向かう最大の武器である。造林を通して5000万トンに達する大気中の炭素を除去し、淡水の利用を増やすことができるだけでなく、費用の面でも効果的にサンゴ礁の回復促進を図ることができる。天然資源管理当局は、気候変動に立ち向かうために、自然の回復力を高め、ハワイの森林、海岸線、沿岸海域がもたらす豊かな資源を守るためにさらなる努力を重ねている。 |